ダイエットセラピー(ロングセラーズ)/アレン・カー著・阪本章子翻訳
評価:★★★★★
これまで読んだ3千冊以上のダイエット本の中から、心に残る10冊をあげよと言われれば、この「ダイエット・セラピー」まず間違いなくその中に入ります。ダイエットセラピーが求めるものは、ベジタリアン(比較的ビーガンに近い)かつ未精製食品を好む(ジャンクフードや砂糖を嫌う)食生活です。そういった意味では、他のベジタリアン系のダイエット法と実践することはたいして違いがありませんが、特徴的なのはそこにたどり着くための仕組みが科学的なエビデンス(根拠)ではなく、文学的に情緒に訴える手法をとっていることです。フルーツの素晴らしさを表現するのに、力強いゴリラがフルーツを好んで食べていることを例に出します。牛乳を飲むべきではない理由として、人間以外の哺乳類が成体になった後に母乳を飲まないことを指摘します。砂糖は人間の味覚を狂わす魔の食べ物と糾弾します。それらが、人間の体内でどのような働きをするのかについて生化学的には一切説明しません。私たちの行動の規範は必ずしも科学的ではありません。むしろ道徳的、慣習的、宗教的であったりします。そのような私たちの行動の規範を変える(やせる食生活にする)ためのアプローチとして、本書のような文学的な手法が必ずしも排除されるべきではないと考えます。表現手法はともかく、ベジタリアンに興味のある方にはおすすめの一冊。ただし、科学万能主義の方は当然ながら除きます(ちょーイライラするよ)。