味博士のぜったい太らない食べ方(日本文芸社)/鈴木隆一
評価:★★☆☆☆
食事の制御モデルの一つに、空腹という”苦痛”から逃れるために食事を開始し、満腹という”苦痛”で食事を終えるというものがあります。つまり、食事は始まりも終わりも”苦痛”がキーワードであるというものです。本書は、その満腹の苦痛を早めるために(食事の量を減らすために)料理の味をコントロールしましょうというものです。より端的にいえば、料理の味がマズければマズいほど早めに苦痛(満腹)になるということを味覚の原理から説明しています。
一例としては、甘味、塩味、酸味、苦味、旨味のうち、複数の味覚が重ならないような食品の方がより早く満腹になる。別の言い方をすれば、ただ甘ったるいだけ、ただ塩辛いだけみたいな単調な味の料理は箸がすすまないので、そのような料理をダイエット中に選んで食べるべしみたいな感じです。
逆に、複雑な(複数の)強い味覚が組み合わさっている食品は箸がすすむ(食欲が増す)ので食べるべきではないと著者は言います。
ダイエット中の食品の選び方として食品を構成する味覚の分析からアプローチするという発想は大変ユニークです。しかし、おそらく現状ではダイエットよりも味覚の分析をする労力の方が大きいと思われること(本末転倒ってことです)。ポッキーは塩味と甘味が強くて食欲をそそるのでやめろと言われても、それが止めれないから困っているんだという人に対しては何の答も提示できていないこと。カレーライスは味覚の構成的に食欲が暴走しやすいから味覚の構成を変えるために卵やチーズをトッピングしろと言われても、食欲が暴走する人の原因は食品の味だけではないよねっ??てツッコミたくなること。その他様々を考えると、現段階では興味深くはあっても机上の空論と言わざるをえません。