痩せて失う利点もある
~太るメリット~
百家争鳴ダイエット学11(2005年4月14日沖縄タイムス寄稿文より改変)
「配偶者や恋人を痩せさせたければ『やせろ』と命令すべきではない」。私は時折こんなことを言う。すべての人に当てはまるわけではないが、「やせろ」と言われるとかえって恋人の態度を硬化させる恐れがあるからだ。
「やせなきゃ私のことを好きになれないの?」という疑問は、太っていても愛されることでしか解消しない。
「痩せなければ結婚できない」「そんなに太っていては就職できない」などとして周囲にプレッシャーをかけられている人がいるとする。もし本人が結婚や就職に大きな不安を持っていたり、興味を全く持てない場合は「やせないこと」が一つの分かりやすい意思表示になる。
太る原因ややせない理由については、えてして食べ過ぎと運動不足が指摘されがちだが、本質的な問題はそこにはないこともある。なぜなら多くの人は自分の食べ過ぎと運動不足を十分自覚しながらも、ダイエットに失敗している現状があるからだ。
「そんなことは分かっているけどできない」
これこそがダイエットが難しいことの真のゆえんではないであろうか?
心理学者は時につきすぎた体脂肪を"鎧"と表現する。鎧により何から守られているかは人それぞれである。ある人は異性に性的な対象として見られることを避けるためにその鎧をまとっているのかもしれない。またある人は自分がユーモラスな人間であることを表現するために、その大きな鎧をまとっているのかもしれない。
大切なことは、何を守るにしても彼らにとって守るべきものは何かしらの彼ら独特の価値があるものであり、そのためにやせないことにも幾ばくかのメリットが生じるということだ。
ダイエットの指導者に注進させていただければ、人にやせろと言うときには依頼者がやせて得るメリットだけではなく、やせることにより失うメリットにも多少の気配りをしていだきたい。また、本気でダイエットしたい方に提言すれば、まずは太っていることによりあなたが得ているメリットがないかを点検するべきである。そして太っていることに何かしらの利便性を見つけたら、それを失う覚悟を決めること。
太っているメリットを享受しながらやせようと試みるのは、車で言えばアクセルとブレーキを同時に踏んでいる状況に等しい。前に進むためにはまずはブレーキから足をはずし、その後アクセルを踏み込むのがよい。
(ダイエットガイド河口哲也)
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