「得」は何かを見極めて
~動機と報酬~
百家争鳴ダイエット学9(2005年3月31日沖縄タイムス寄稿文より改変)
世の中にはせっかちな人も多いようで、開口一番「で、結局どのダイエット法がいちばんいいのですか?」と聞いてくる方は多い。その時の私の答はいつも同じで「最も合理的で信頼できるダイエット法は、医師が肥満症の治療で行なっている方法です」。すると多くの方はけげんな顔をする。たぶんその人が思い描いていたダイエット法のリストには、医療機関での肥満治療は入っていなかったのであろう。
医師が行なう減量方法は、カロリー制限を中心とした食事療法、ウォーキングやジョギングなどの主に有酸素運動を取り入れる運動療法、そして太る原因となった悪い行動を、良い行動へと変換させる行動修正療法と呼ばれる治療法を複合させたものだ。状況によっては薬物療法や外科手術なども取り入れられる。
しかし、多くの場合「でも、あなたがそれを行なうのは難しい」とも付け加えなければならない。なぜならば、私の目の前に現れる人の多くは、医療としての肥満症の治療対象となるほど太ってはいないし、何より命の危機が迫っている人のために開発されたダイエット(治療)法をそうでない人が簡単にできるはずがないからだ。
ダイエットの世界においては何故か個々人の動機や報酬の違いが無視されやすい。
どれくらい努力できるかというのは、それにより得られる(期待される)報酬の大きさに比例する。命拾いをする人と、9号の服が7号になる人ではできる努力も違ってくるのは当然である。
そういう意味では女優やファッションモデル、人気アイドルが推薦するダイエット法にも注意しなければならない。彼女たちはスタイルを維持することが仕事の一部である。美しいスタイルを保てば保つほど直接金銭や名声という報酬とつながりやすいという点で一般の人とは報酬の大きさ、質が全く違う。
私はダイエットをしたいという人には、まず痩せてどういう得があるのか?を全て紙に書き出してみることをお勧めしている。そこにほとんど利益が見いだされなければ、時間や労力、金銭等をたくさん使うダイエット法は避けた方が無難だからだ。
世の中には何となくやせればいいことがあるかのような情報が氾濫している。そしてその情報に何となく流されてダイエットを行なう人も多い。その結果、何となくダイエットに失敗している人が多いように思うのは私だけであろうか?
(ダイエットガイド河口哲也)
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