～失敗しないために～

百家争鳴ダイエット学15（2005年5月12日沖縄タイムス寄稿文より改変）

インターネットの書店で検索してみればわかるが「ダイエット」に関する本は、現在購入可能なものだけでも1000冊以上ある。まさにこの世界は百家争鳴である。

どの専門家の意見を採択するかは最終的にはあなたにかかっているが、今回はあなたがダイエット法を選択するにあたり、ぜひ守ってほしい、いくつかの指針についてお話したいと思う。

まず第一は「不幸になるものは避ける」である。詳しく説明すれば、そのダイエットを行うことにより、あなたにとってより価値がある行動が妨げられる場合はそれを避けるということである。

おそらく自分の人生の目標がスリムになることだけという人は存在しない。ダイエットしようとしている人は、同時に家庭生活上の目標、仕事上の目標、健康上の目標などさまざまな他の目標をもっているものである。

そして、それらの目標の中には本人がダイエットよりも重要だと認識しているものが通常はある。仕事での成功がスリムになることによりも優先順位が高い人は、仕事の成功を妨げないダイエット法を選ばなければならない。子育てがスリムになることにより重要ならば、同じく自分の理想とする子育ての邪魔をするようなダイエットは避けるべきだ。

第二は「みじめに感じるダイエットは避ける」である。ダンベル体操一つをとっても、それを行っている自分がカッコイイと思える人もいれば、太ったことに対するバツゲームをしているようでみじめに感じる人もいる。ダイエット補助食品や特殊な食餌法もすんなり受け入れられる人と、多大な不快感を持つ人とさまざまだ。エアロバイクも家で一人で乗るのと、スポーツクラブで大勢で乗るのは、どちらがいいのかは別として、乗り心地は人によりまったく違う。

そもそもダイエットには現在の自分の否定という要素がある。もちろんそれは新しい自分になるための一つのステップではあるのだが、目的が新しい自分になることである以上、その過程の自己否定をムダに助長することは得策ではない。

最後に上記のことを踏まえると「ダイエットをしない」という選択肢も自分の中でもつ余裕が必要である。ダイエットには時間、労力、場合によっては金銭がかかる。それらは人生のほかの目標との関係で常にふんだんに使えるとは限らない。現在の自分の状況がダイエットを真剣に行える時期かどうかを冷静に判断し、場合によっては休止して時期を待つ勇気を持つ。これこそが失敗しないダイエットへの第一歩である。



（ダイエットガイド河口哲也）

百家争鳴ダイエット学１～ブーム終了難しくない～
百家争鳴ダイエット学2～目指すは「今よりやせる」～
百家争鳴ダイエット学3～大戦で使われた「やせ薬」～
百家争鳴ダイエット学4～「体に悪い」って本当？～
百家争鳴ダイエット学5～肥満児放置という虐待～
百家争鳴ダイエット学6～科学者はゲストに呼ばない～
百家争鳴ダイエット学7～合法的に“誤解”させる～
百家争鳴ダイエット学8～行き過ぎは差別助長～
百家争鳴ダイエット学9～「得」は何か見極めて～
百家争鳴ダイエット学10～運動するには時間確保優先～
百家争鳴ダイエット学11～やせて失う利点もある～
百家争鳴ダイエット学12～通勤と運動を同時に～
百家争鳴ダイエット学13～真実の探求者を惑わす～
百家争鳴ダイエット学14～「食育」の教育を学校で～
百家争鳴ダイエット学15～時期を待つ勇気も必要～